生意気にもクラウドを解説してみる

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最近クラウドという言葉が自分のまわりにも浸透してきた。
たいていはクラウド=雲という例えをもって説明している。じゃあ曇ってなんだ?というとインターネットを表すそうだ。
よって、クラウド=インターネットである。
さすがにこんな簡単な式で納得はできまい。クラウドという言葉はもう少し別のニュアンスで使われる。
クラウドという言葉には正確な定義がないとのことなのでちょっとシステム構築をかじった自分なりの解釈を記していこうと思う。なんかの標準化団体によって定義されたり、時代の流れとともに自分の中でも意味が変わる可能性もあるので、2010年6月現在での解釈だ。
最初に結論から。
クラウドとは、グーグルにあやかろうとする企業に対して、ITベンダの営業やコンサルティング会社が利用する口説き文句用のワーディングの一つである。
それでは解説させていただく。
クラウドの使用形態として一番多いのは、ユーザはモノをもっていなくても、インターネットを通じてサービスを受ける形態。例えばスケジュールを管理したいと思ったとしよう。ここではパソコンなり携帯なりアナログではないツールで管理することを前提とする。きっと”スケジュール管理”などと検索したりして最適な方法を見つけるであろう。OutLookのようなソフトウェアをPCにインストールして管理する方法もあれば、Googleカレンダーのようなインターネットを通じたサービスで管理する方法もある。この二つの違いはソフトウェアというモノが必要かどうかである。そう、インターネットの向こう側にはきっとGoogle側で用意したアプリケーション(ソフトウェア=モノ)が動いているんだろうけど、使う側、つもりユーザはそれを意識せずにサービスという形でスケジュール管理という目的を達成することができるのだ。要するに目的を達成するためにはいくつか方法があるのだけど、インターネットでのサービスを使う方法というのがクラウドという呼び方をされる。
しかし、まだ不完全な説明である。もう少しつっこんで考えるとインターネットでGoogleカレンダーを使うにもIE(ブラウザ)等のソフトウェアがいるじゃないか、そもそもパソコンなどデジタル機器というモノが必要じゃないか、と。方法の違いだけではクラウドは説明がつかないのだ。同じ例えを利用すると、OutLookでスケジュールを管理するとしたら、入力したスケジュールのデータ(6/12にコストコに行く等)は誰が覚えているのだろうか。きっとユーザのパソコンの中のハードディスクが覚えていてくれるのだろう(※1)。Googleカレンダーで管理しているデータは、インターネット上のGoogle(厳密にはきっとGoogleが管理しているサーバのハードディスク)が覚えていてくれるのだろう。この違いはデータが、自分のモノの中にあるか、それともインターネットの向こう側にある他人のモノの中にあるかである。データがインターネット側にあり、それを管理することもクラウド(のサービス)と呼ぶので、さきほどの方法の違いだけでは説明がつかない。
クラウドのサービスであるGoogleカレンダーは何を提供してくれているかというと、管理する方法というソフトウェアの部分と、データの置き場所というハードウェアの部分などなどをインターネット上で提供してくれているのだ。
インターネット上でソフトウェアとハードウェアを提供してくれるサービス。これがクラウド。
ちなみに、データが自分のモノの側にあると、インターネットに接続されていなくてもデータを活用することができる。データがインターネット側にあると、インターネットに接続できる環境がありさえすればどこでも同じデータが活用できる。最近はモバイル接続やスマートフォンなど携帯電話のネットワークを使ったり、ホットスポットが使えたりと、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境(ユビキタス)が安価で整いつつあるので、クラウドが流行っているとも考えられる。
せっかくなので、クラウドとユビキタスの違いがこちらに一言で記述してあったので紹介しておく。

あちら側が何でもいいのがクラウド
こちら側が何でもいいのがユビキタス

なんとなくニュアンスが伝われば、今までの説明も報われます。
ここまで読んで、なんだ知っていることばっかりじゃん、と思うリテラシーの高い人は、もう少しだけお付き合いいただきたい。
これまでの例がぜんぜん新しい話じゃないということにはすでにお気づきであろう。クラウドを構成するSaaSというソフトウェアの部分利用も、PaaSというプラットフォーム(DBなどミドルウェア)の部分利用もクラウドという言葉ができる以前から存在する技術である。恥ずかしながらHaaS、IaaSというハードウェア/インフラの部分利用はいつできたのかは自分はわかっていないが。余談ではあるが、インフラ(NW)の部分利用という概念について、一時的に帯域をあげることなどが技術的に可能となってきたので、通信会社もクラウド企業と名乗るのではないかと思っている。話が逸れたがクラウドは決して技術の話ではなく、概念なのでインターネットができた当初からクラウドという使われ方は形はどうあれ存在していたのだ。
グーグルの成長が著しいといわれた時期に、グーグルが成長した仕組みをいろいろな角度からみていったら、その仕組みの一つにインターネット上でいろいろ提供するサービスがあった。これを真似したり昇華したりできれば他の企業も成長する可能性がある。このサービスのことを便宜的に、いや格好つけて名付けたのがクラウドだと思っている。よって一番はじめの結論である(※2)。
最後に最近読んでいた本を紹介しておく。
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この本ではクラウド=群衆と定義されている。よって上記のクラウドとはまた別の話である。インターネットの向こう側という意味の部分では一緒。
正直に言うと読むのに1ヶ月以上かかってしまった本。「みんなの意見は案外正しい」が登場するあたりからも二つの本は似ていて読みづらい。でも良書。インターネットの可能性はまだまだありそうだと期待が持てた。成功だけでなく失敗も含めてインターネットを使った群衆心理を事業に活かした事例がたくさんあったて、自分の好きな事も何か役にたてるのではと思ったのと同時に、みんなの力を合わせる事業を企画したいとも思った。蛇足だがハヤカワ新書juiceシリーズはなかなかに魅力ある本が多く今後に期待が持てる。
※1
OutLookとGoogleカレンダーを同期することもできるが、ここではOutlookはローカルで使うと限定している。
※2
システムを使う側/購入する側は案外ITリテラシーが低かったりもするので、クラウドという流行の言葉を営業から持ち出されると知っておかなくては的に考え、ついつい聞いてしまうようなのだ。

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