テーラードジャケット
その男は物臭だ。
衣替えなどは最も面倒臭いと思っている作業で、なるべく後回し後回しにしようとしてしまう。
そのくせ、恥ずかしい格好はしたくはないときているからタチが悪い。
男の職場は一応ビジネスカジュアルなのだが、職場で浮いてしまわないように、襟付きシャツとジャケットを着ておいた方がいいかな、とは思っている。
毎日同じ服ではなく、かつ天候気温やTPOを鑑みて、自動的に清潔な服を選んで、いや用意、くれるサービスがあったら本気で検討したい。
秋から冬にかけて、だんだんと寒くなっていくこの季節は、男にとってはどこまで寒さに耐えられるか戦いだ。
会社に行く際に、いかにコートを使わず、秋に着ていたジャケットやカーディガンやらで凌いでいた。寒くなりそうな日は暖かい機能性インナーを着たり、マフラーを追加ことで問題はなかったのだけど、そろそろコートを装備している人が大多数になってきた。
男は、会社の洋服に関しては、周りに合わせるのが正しいと思っている。通勤時など周りを見渡して洋服の装備を確認して、そろそろコートを出さなきゃなと思ったりするし、会社や社外での会議などで他の人がネクタイをしていれば次回から締めてくるか、となる。
コートは荷物として嵩張るので嫌いだ。
電車でせっかく座れたとして、自分も隣の人も厚ぼったいコートを着ていると、お互い干渉して心地よい眠りにつけない。(いや無理してまで寝なくていいんだけど)
しかし11月も下旬となり、朝6時に家を出ている身としては、ジャケパンスタイルだけでは流石に(他人からの視線も自分自身も)寒く感じることが多くなってきた。
ということでコートはギリギリまで着たくないけど、そろそろひっぱり出すかと思っていたタイミングだった。
その男が立ち寄ったのはGU。
たまたまセールをやっていたというのもあるが、前回購入したスーパーストレッチカラースキニーパンツがとても気に入っているので、掘り出し物を探しに定期的にGUを冷やかしに訪れているのだ。
そこで出会ったのが、ウールライクなテーラードジャケット。男にとってこれはベストな選択だった。
まず、素材はポリエステルなんだけどウールっぽい厚手な感じで、これはもうハーフコートと言っても過言ではない。寒さを防いでくれるし、コートとジャケットという二つの見た目を持っている。
そのくせシルエットは、若干細めなのですっきりしているのが男の好みに合っていた。
スタイルを良く見せてくれる美シルエットのテーラードジャケットです。すっきりとボディラインに沿うようなウエストシェイプが特徴。伸縮性のあるジャージー素材でストレスフリーな着心地ながら、ウール見えする上品な風合いです。防寒性は残しつつもウールより軽いので、冬の重たくなりがちなコーディネートに軽やかさを演出します。
男が購入した「コンフォートテーラードジャケットCL」の商品説明には、ジャージー素材と書いてあったが、ストレッチはほぼないのは残念だった。
ポリエステルなのに、見た目はウールなので暖かそうに見えるのも、コート代わりに使える理由の一つだ。会議でジャケットが必要になった際も、もちろんジャケットとしても使える。細身のシルエットだが、薄手のニットであれば、着込むことも可能だ。
そしてそれはセールで3,990円だったのだ。
なんだかんだ言って価格は全ての価値を決めてしまう事を男は嫌というほど知っている。そしてGUの価格は本当に驚きだ。ジャケットを買おうと思って行ったわけではない男にジャケットを買わせてしまうのだ。
男は、もう、GU(という安さ)に魂を売ってしまったのだ。