夢を旅した少年

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西武園

最近の読書は、童話ジャンルが多い。今回読んだ「アルケミスト 夢を旅した少年」はポルトガル文学となっていたが、自分的には大人も読める童話だと思っている。

この物語は、少年が何度も繰り返しみた夢を信じて、ピラミッドを目指し旅に出るというお話なんだけど、その中で事件が起こり何度も挫折しそうになる。その挫折の仕方がなかなかに心をえぐってくる。大人なら簡単に夢を諦めさせるくらいの。でもそれを乗り越えて旅を続ける様は、大人が読めば少年の頃の自分に重ねあわせて感傷的になるだろう。

正直なところこの本の”夢”が主人公の少年にとってどれだけ大事なものかがわからない。どんなものかわからない”宝物”を探しにいくという動機付けだけで、すべての財産を失ったり、愛する人と離れたりすることができるのだろうか。そんな損得勘定が働いてしまうのは自分が大人になってしまったからなのか。ということで感情移入できたのは主人公より、まわりの大人、特にパン屋さんやクリスタル商人やだったりする。

パン屋さんは旅をしたくて、お金を貯めるためにパン屋を始めた。多少のお金は貯まり、自分の夢見ている旅行をいつでも実行できるようになったが、それに気付いていない。いや気付いているけど気付かないふりをしているだけかもしれない。

クリスタル商人は変化を望まない。やっぱり、メッカへ巡回に行くためにクリスタルの商売を始めたが、まだ巡回にはいっていない。巡回に行く人は商人よりもずっと貧乏な人(しかし幸せそうな人)だったりもする。夢は実現できるかもしれないが、実現してしまったら自分が空っぽになってしまうのがこわいとも言う。夢は夢のままで今の暮らしのまま一生を終えるつもりなのだ。

そして主人公の少年だって、旅をして暮らしたいという夢のために羊飼いになっていた。その暮らしに特別不満はなかったはずだ。

一度安定を手に入れると、それを手放す事はとても厳しい。変化をさせないで現状通りのままとするための言い訳ならば、そこら中に存在している。変化を目指して、一度でも挫折しようものなら、ほらやっぱり、とさらに変化を恐れるようになる。

大事なものが増えてくると、それを捨てられなくなってくる。何かを犠牲にしないと新しいことはできない。安定している状態から一歩踏み出す事は、大人になればなるほど難しいものです。この本の言いたいこととはずれているのかもしれませんが、自分の率直な感想でした。

いつの間にか増えてきた大事なものと、本当に大事なものの比較なんて、そもそも自分にはできないかもしれないな。うーん、この童話、考えさせられる。

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