GO WILDを読んで

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トレイルランの本と聞いて。というか、副題に「科学が教えるトレイルラン」とあって、さらに健康の本のようなので読んでみました。

正直期待していたような本ではなかったけど、いくつか心に残るフレーズがありました。

健康を保つためにする運動は、楽しくなければ本物ではないということだ。楽しもう。これは一見あいまいで漠然とした基準のように思えるかもしれないけれど、そうではない。筋肉と脳をつなぐ生化学的経路のことを思い出していただきたい。その化学物質のほとんどはよりよい脳を育てることに関わっているが、それらは報酬にも関わっていて、気分をよくし、自分は大丈夫だ、正しい道を進んでいる、前進しているという信号を調整しているだ。

運動は身体にも脳にもよい、という説明なのだが、ただ苦しいだけのトレーニングでは効果が落ちるというのだ。運動を楽しむ。ジムで決められた回数の筋トレや決められた時間/速度でのトレッドミルではなかなかに難しい。そんなときは外にでて、何が起こるかわからない山道を走り、山頂に挑むことで、運動自体を楽しもうというわけだ。楽しむ方法は人それぞれだとは思うけど。

つまり、トレイルランニングでは複雑で変化に富む動きが求められているので、脳がフル稼働しているのだ。

複雑で変化に富んだ動きをするには、さまざまな筋肉が必要で、その動きを統括することで脳はよい刺激をうけているのだ。予測の出来ないランダムな環境が最高とのことです。

GO WILD(野生の身体を取り戻せ)というタイトルですが、昔の世界最高、現代は最低という話ではありません。

いっぽうではソーシャルメディアに惹かれ、もういっぽうでは山の野生に惹かれるという自らの一見矛盾する愛着

人間は昔からつながりを求めていた。自然に対して動物に対して植物に対して。そうした原始的なつながりが失われるにつれて、人間は孤立して行って、人間同士でつながりを強化していったのだ。失われたものものだから、今ひつようなものだから、と、どちらも求める。どちらも必要。欲張りな気もするけど。そういう風にできているらしい。

健康との関係が深い、睡眠についても言及されています。睡眠には、適度な雑音や人の気配が必要とのことです。

結婚している人やペットを飼っている人のほうが、独身の人より長生きするという疫学上の発見について、なぜなのか説明がつくかもしれない。つまり、前者のほうがより熟睡できるからなのだ。

熟睡するために、安心した環境が必要なのですが、集団で寝るという行為は安心感が増すとのことです。太古の昔は外敵から家族や集団を守るために誰かが起きて見張ってくれていると安心、という習性からのようです。

このようになるほどなぁと思うフレーズがたくさんある一方、期待していたトレイルランへの考察が少なかったことと、狩猟時代にはほとんど食べていなかった「炭水化物」や「糖質」を減らして、本来の野生の身体を手に入れて具体的に何が幸せになるのかよくわからなった点が、期待はずれというか不満でした。美味しいラーメンを我慢する代わりに手に入るものが自分にとって価値があるのかはよく比較してみたいところです。

この本を自分なりに纏めるとすると、一つは、「すべてはつながっている」という考え。食事も睡眠も精神も運動も健康も病気も環境も社会もすべてがすべてに影響している。どこか不調になった際に何か一つに原因がある場合は少ない。複雑に考えすぎるのもよくないが、快方に向かうためには、いろいろなものを少しずつ変化させる必要があるのだ。もう一つの纏めは、「多様性が重要」という考え。単調な動き、単調な毎日では、身体も脳も衰えていく。変化に敏感になり、変化に着目する。複雑な現代なら、どこにでも変化は転がっている。それを脳や身体のために楽しむことができれば最高だ。

最後にGO WILDの文中でも言及されていた、ゲーテの言葉を紹介して、感想を終わりにさせていただきます。

「連日の晴れは何よりも耐えがたい」

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