生産性について思うこと

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新宿御苑

最近、生産性という言葉をよく耳にするような気がしています。

日本のGDPが高い低い等のニュースや、会社でもライフワークバランスの話とセットで生産性を高めていこうという話があったりしています。

自分も、前回のブログ記事に生産性をテーマにした本の感想をエントリーしたばかりだったので、非常にタイムリーに、その重要性を感じています。

ということで今回はそのものズバリの「生産性」という本を読んでみました。前回の「自分の時間を取り戻そう」をAmazonで購入すると必ずレコメンドされる本でございます。レコメンドエンジン、優秀ですなあ?!

著者の伊賀泰代さんはマッキンゼーで働いていた方で、その経験をもとに本書を書かれています。本のサブタイトルにも「マッキンゼーが組織と人材に求め続けるもの」といった感じでマッキンゼーを前面に押し出してきていますが、つまりはマッキンゼーというすごい会社にとっては当たり前なんだけど、日本の会社にはまだまだ浸透していない生産性という素敵な指標を教えてましょう、といった本です。

実際、マッキンゼーの仕事(コンサル料金)はすごく高いと言われており、逆に言えば、その値段を払ってでもマッキンゼーのコンサルティングを受けたいという評価をされていることであり、マッキンゼーの働いていたというだけでも尊敬できそうな気になるかもしれません。自分なんかは器が狭いのでコンサルを受けるより自分たちで考えようぜ、と思ってしまうタイプですが、それでもコンサルタントの相手のレベルに合わせた説明をしてくるプレゼン能力や短期間での資料作成能力には舌を巻きます。さらには外資系企業だと日本人にはできない非常(非情?)に合理的な判断もしてそうという、黒船に怯える日本人の気持ちもうまく活用した能書きになっているような気がします。

まあ能書きはとにかく、早速本を読んでみました。前回の「自分の時間を取り戻そう」はターゲットの読者層は学生から大人まで幅広い層向けだったと思われますが、今回の「生産性」は社会人でかつリーダー格以上の人をターゲットにしているように感じました。

特に、PDCAに代表される改善活動については、コスト削減は結構どこでもやっているというか、大抵大きな改善はすでに終わっているのでチマチマした改善しか残っていないというケースが多いような気がしています。そこで本書では、改善(インプルーブメント)以外にも革新(イノベーション)といった大胆な決断を伴う手法も紹介されていますが、それを提案したり決断したりするのはある程度の経験(つまりはリーダー以上の立場)が必要そうです。まあイノベーションを伴う生産性の向上を狙うためには、頭が柔軟で、世の中の最新の技術に敏感で、嫌われ者になるのも辞さないそれなりの地位があるような人が必要って感じもしますが、もしかしたらそれが日本人に足りないものかもと思ってみたり。

とにかくビジネス書にふさわしいビジネスの現場を意識した生産性向上のための考え方が載っているので、これなら自分も取り組めそうだと思える部分も多いです。やや平易な例に偏っている感はありますが、生産性を上げるための実際の会議のゴールの具体例や、現状の生産性向上施策の問題点等は、それなりの規模の組織で働いたことがある人であれば、すんなり頭に入ってくるはずです。

一番良かったのは、自分がなかなかうまく他人へ伝えることができなかったプロセスの重要性について、言語化されていたところ。例えば、

「既存業務をヒアリングして、手で運用していた部分をシステム化する。稼働費(手運用の人件費)とシステム開発費を比較して、効果があるのならばIT投資を行う」

というのも生産性を高める悪くないIT投資に聞こえますが、より生産性を意識すると、”従来行なっていた業務の方法がそもそも効率的なのか”、から考える必要が出てきます。業務全体のプロセスを見直し、本当に無くすことができない業務なのか、システム化すべき最低限必須な項目は何か、イレギュラーなケースもシステムでカバーすべきなのか、別の方法で目的が達成できないのか、等を考える必要があるわけです。

ユーザ部門の言いなりにシステム開発を続けていたら、ごく一部の人/業務のみに最適化されてしまい、全体としてみれば使い勝手の悪い非効率なシステムが出来上がってしまった、とか、従来から行なっていた非効率な仕事のやり方までシステムに組み込まれてされてしまった、というのはシステム部門の存在価値を疑われる事態です。

自分はこれを”部分最適ではなく全体最適を目指しましょう”と、としか表現できていませんでしたが、”生産性を意識し今あるプロセスを一旦忘れてから再度プロセスを構築し直してみましょう”の方が少し具体的に伝えられそうです。

ちなみに、生産性の定義は、前回のエントリー同様、”アウトプット÷インプット”なわけですが、生産性をあげるのは、インプットを上げてしまうのはナンセンスだよ、というのが「自分の時間を取り戻そう」で記載されていて、本書ではインプットの減らし方は単純に量だけではなく工夫が必要とか、アウトプットにも質を求めるとか、少しビジネスに突っ込んだ内容が記載されています。不思議なことに、同じテーマについて書かれているのにあまり記載領域が被っていないので、両方、順番に読むのもオススメです。そんなに時間はかかりません。

もう一つ生産性向上の例をあげると、判断するのが仕事、というような立場や組織の場合、判断基準が明確になっていてその基準が組織内に共有されていると生産性はぐっと上がるようです。(判断するには無用な)情報集めの労力とか、パワーバランスを考えた事前の根回しとか、リスクは全て無くさなければならないと信じている人への言い訳などが不要になりインプットを減らせるからです。逆に言えばロジック(判断基準)と情報(基準に達しているかのデータ)が判明していれば、誰でも判断ができてしまうようなことに偉い人の稼働を消費すべきではないのです。偉い人しか知り得ない情報があるかもとか、合理的は判断ではなく政治的な判断が必要かもとか、情報共有という目的も兼ねて相談しているとか、色々判断を上に仰がなければならない言い訳はできそうですが、それぞれもロジック化して、こう言った場合は上に判断を仰ぐことと言ったルールを作るべきなのかもしれません。

世の中の動向的にも、今までより少ない労働人口で今までよりも大きな負担(成果)を強いられてくるのは明らかです。誰しも今までどうりの生活には必ず破綻がくるので、少しの投資で多くの効果が生まれるような工夫をそれぞれが行う必要があります。それを意識するのが生産性という言葉。生産性を意識しつつ、自分がコンサルタントになったつもりで、仕事場に立てると、少し違った世界が見えてきそうです。

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