学びと知的生産

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本エントリーは「エンジニアの知的生産術」を読んでの感想になります。

由比ヶ浜

当たり前だけど、学ぶことと生産することは違います。

学ぶのは大抵は過去の事例です。こういう場合はこういった方法/考えを使うといいよという先人の知恵(もしくはベストプラクティス)になります。

生産は、先人の知恵などを活用してアウトプットを生み出すことなのでしょうけど、そのアウトプットをさらに効率よく生み出すことが知的生産術です。

我々は商品の値段を計算するには、暗算やソロバンや電卓など色々な方法がありますが、時と場合によってその方法を使い分けていると思います。時代によっては新しい方法ができたり、古い方法が廃れてきたりもします。しかしその方法のほとんどは過去の誰かが考えた方法です。

“計算”という例を、”学び”に変えてみましょう。学ぶには、教科書を読んだり、学校に行ったり、誰かに聞いたり、ノートをとったり、と自分にとって一番効率に良い方法を選択するのですが、こと”学び”に関しては結構自己流のやり方(≒勉強方法)があったりするのではないでしょうか。

つまるところ、知的生産術は勉強方法に近いのですが、勉強する行為が目的ではないぞ、ということと、その方法は人によって千差万別なので具体的なやり方は自分で手を動かしてみなければなりません。でもいきなりやってみろでは乱暴です。過去の学生時代のやり方が今でも通用するかも疑問です。

本書はこの学びについて、過去の事例だけでなく、自分に合った効率的なアウトプットの編み出し方、つまり生産方法を解説しています。

タイトルに「エンジニアの」とありますが、決してエンジニアのためだけに書かれた本ではありません。自分もエンジニアかと問われると即答できないレベルの人間ですが、非常に参考になった考え方がたくさんありますし、エンジニアの特別な知識がないと読めないこともありません。哲学書や古典などの引用や注釈がたくさんあり、とっつきにくさは認めますが。

繰り返しになりますが、学ぶことが全てでもありません。あくまでアウトプットが主目的です。

例えば、アイデアを出すために色々なフレームワークがあったりしますが、学んだフレームワーク通りにいかなかった場合、それはもしかしたら、規定のフレームワークに当てはまらない新しい概念かもしれません。そこでフレームワークに当てはまらないからとアイデアを捨ててしまったら、本末転倒です。フレームワーク外の事象こそが新しいアウトプットかもしれないし、それを自分流のフレームワークに落とし込むことが知的生産、つまりは新しい手法を生産することにも繋がります。

さて、知的生産の定義はこのくらいにしておきます。

久々にブログに書評めいたものを書こうと思ったのは、本書の「記憶を鍛えるためには」「効率的に(本を)読むには」に人に教えたりブログ記事にまとめてみたりと書かれていたからでもあったりします。そのくらい本書から影響を受けたのですが、まずは目次を紹介します。

  • 第1章 新しいことを学ぶには
  • 第2章 やる気を出すには
  • 第3章 記憶を鍛えるには
  • 第4章 効率的に読むには
  • 第5章 考えをまとめるには
  • 第6章 アイデアを思い付くには
  • 第7章 何を学ぶかを決めるには

これを見ると、エンジニア向けという本ではないことがわかると思います。でも良くあるビジネス書っぽい感じもして、自分なんかは少し食傷気味な気分になってしまいます。しかし、はじめに書かれた「この本の目的」に、知的生産術の参考書はいくつかあるが、限られた時間で1冊だけ読む場合にオススメできる本がない、ということで作られた本である旨が書かれています。なのでとてもベーシックな内容になっているのでしょう。色々な良書に言及されているのも、(本来は現本を読んで欲しいけど必要最低限として)濃縮されたエッセンスのみを短時間で伝えたいという思いからなのではと思います。

この本はかなり汎用的な本です。この本をただ読んだだけでアウトプットが素晴らしいものになるとは思えません。でもこの本を読んだ後からは、意識が変わると思います。今、何かを学んでいる人はラッキーです。すぐに手を動かして検証するサイクルを回せますから。これから学ぶことを決めようとしている人は最終章の自分経営戦略が参考になります。

知識を知っている(だけの)人と、知識を活用できる人の違いはよく聞く話ですが、知識を生み出すことができる人が最強なのではないでしょうか。面白い本でした。

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